「呼吸器科診療について」 呼吸器内科・外科のご案内
私たちの病院では、呼吸器に関するさまざまな病気に対し、呼吸器内科と呼吸器外科が連携してチームで診療にあたっています。
定期的なカンファレンスを通じて患者様の情報をしっかりと共有し、一人ひとりに合った最善の医療を提供しています。
不安や疑問を抱えたままにならないよう、病気だけでなく、社会的・経済的な面にも配慮した丁寧なサポートを心がけています。
胸部レントゲンの異常影や、せき・息切れなどの症状が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。
私たちがしっかりと診断し、患者様の意思を尊重しながら、最適な検査・治療をご提案いたします。
以下のような症状を中心に診療・治療を行います
感染症が主体の病気
- 肺炎
ウイルスや細菌などによる肺の感染症です。
軽い場合は飲み薬での通院治療が可能ですが、重症になると入院が必要なこともあります。
当院では、必要に応じて血液検査や尿検査、細菌培養などを行い、原因を調べて的確な治療を提供しています。
また、胸水や膿胸(肺の周囲に膿がたまる状態)が見られる場合には、呼吸器外科と連携し、針やチューブによる治療や手術にも対応しています。 - 肺結核
「昔の病気」と思われがちですが、今でも年間15,000人以上が発症し、命を落とす方もいます。
咳、痰、血痰、微熱、体重減少などの症状が続く場合は注意が必要です。
診断には複数回の喀痰検査や、必要に応じて気管支鏡検査も行います。
排菌がある場合は感染拡大を防ぐための入院が必要です。治療期間は通常6~9か月で、きちんと治療すれば完治が可能です。 - 非結核性抗酸菌症(肺MAC症など)
結核菌とは異なる抗酸菌による感染症で、特にMAC菌が原因のケースが多く見られます。
ガーデニングや土いじりをされる方などに多く、最近では結核よりも多く診断されています。
人にうつすことはなく、進行の速さや症状の出方は人によってさまざまです。
定期的な経過観察や薬物治療など一人ひとりに合った対応を行っています。
慢性的な呼吸器の病気
- 気管支喘息
吸入薬を中心とした治療の進歩により、多くの方が外来での管理が可能になっています。
症状が悪化した場合は入院治療が必要なこともありますが、当院では患者様への教育も重視し、安心して日常生活が送れるようサポートしています。 - COPD(慢性閉塞性肺疾患)
主に喫煙が原因となり、肺の構造が壊れて呼吸がしづらくなる病気です。早期に見つけて治療を始めることで、生活の質の向上や健康寿命の延伸が期待できます。禁煙指導をはじめ、治療、呼吸リハビリ、栄養・ワクチン指導など多面的な支援を行っています。 - びまん性肺疾患・間質性肺炎
「間質性肺炎」は、肺の奥にある“間質”と呼ばれる部分に炎症が起きることで、呼吸がしづらくなってしまう病気です。原因がはっきりしない場合も多く、特発性間質性肺炎と呼ばれることもあります。
炎症が進むと肺が硬くなり、息切れや咳などの症状が強くなってきます。急激に悪化する「急性増悪」には特に注意が必要です。治療には、ステロイドや免疫抑制剤、抗線維化薬などの薬物療法のほか、感染予防としてワクチンの接種(肺炎球菌、インフルエンザなど)も推奨しています。生活の中でできる予防・管理も含め、患者様一人ひとりに合った方法を一緒に考えてまいります。
肺がんについて
肺がんは、日本におけるがんの中でも非常に多くみられる病気のひとつです。
厚生労働省の統計(2020年)では、年間およそ12万人の方が肺がんと診断されており、特に男性では死亡原因の第1位、女性でも第2位を占めています。
治療法の進歩により、肺がんと診断されても以前より治療の選択肢は広がっています。しかしながら、肺がんにかかる方や命を落とす方は依然として多く、早期の発見と治療がとても重要です。
当院では、早期に診断・治療が行えるよう、日頃から次のような取り組みを行っています。
- 健康診断などで胸部の異常を指摘された方には、迅速な呼吸器科の受診をご案内しています(当院は健康診断,人間ドックを行っています)
- 咳や息切れ、痰に血が混じるなどの症状がある方のご相談をいつでも受け付けています
- 必要に応じてCT検査や気管支鏡検査を行い、がんの有無や状態を詳しく調べています
治療が必要と判断された場合には、がんの種類や進行の程度、患者様の体調やご希望に応じて、以下のような治療法を組み合わせて提案しています。
- 手術
- 抗がん剤(化学療法や分子標的薬/免疫チェックポイント阻害薬などの新しい治療薬)
- 放射線療法(他医療機関と連携しながら行っています)
- 緩和ケア(症状を和らげ、生活の質を高めるための治療)
最近では治療の選択肢が増え、より患者様一人ひとりに合わせた医療が求められるようになっています。
当院では、呼吸器内科・外科、腫瘍内科、放射線科などの専門スタッフが連携し、チームでカンファレンスを行いながら、最も適した治療方針を一緒に考えてまいります。
「肺がんかもしれない」と言われたとき、不安な気持ちでいっぱいになるかもしれません。
私たちは、そうしたお気持ちにもしっかり寄り添いながら、患者様にとって最善の選択ができるよう全力でサポートいたします。
「ちょっと気になる」「心配だから話だけでも聞いてみたい」
そんなときも、どうぞお気軽にご相談ください。
気管支鏡検査について
健康診断や定期受診で行う画像検査(レントゲンやCTなど)で異常が見つかった場合、詳しく調べるために追加の検査を行うことがあります。その中でも、病気の診断に役立つ検査の一つが気管支鏡検査です。
気管支鏡検査とは?
気管支鏡検査では、直径5〜6mmほどの細く柔らかいファイバースコープを使用します。これは、胃カメラと似た構造の内視鏡で、口から挿入し、声帯の間を通って気管・気管支の内部を詳しく観察します。
検査の流れ
- 画像検査で指摘された病変の部位を確認しながら、レントゲン透視を用いて慎重に観察します。
- 必要に応じて、鉗子やブラシなどの専用器具を使い、組織や細胞の検体を採取します。
- 気管支洗浄(生理食塩水を注入し、洗浄液を回収)を行い、細胞診や細菌検査を実施することも可能です。
検査時の痛みや負担について
気管支鏡が通る際に咳やむせこみが起こらないよう、局所麻酔を行った上で検査を実施します。さらに、患者様の負担を軽減するため、鎮痛薬や鎮静薬を適切に使用し、安全に検査を進めますのでご安心ください。
ご相談について
気管支鏡検査について詳しく知りたい方、ご不安がある方は、お気軽に外来受診時にご相談ください。
呼吸器の手術について
当院呼吸器外科では、肺がんや縦隔(じゅうかく)腫瘍、転移性腫瘍のほか、気胸や肺の良性腫瘍、外傷による胸部の疾患など、さまざまな病気の手術を行っています。
私たちは、患者様一人ひとりの病状だけでなく、これまでのご病気や生活背景、体調に合わせた安全で体に優しい治療を大切にしています。
肺の悪性腫瘍
肺がんに対しては、胸腔鏡(内視鏡)を使った体に負担の少ない手術から、しっかりとがんを取りきるための開胸手術まで、がんの進行度や全身の状態に応じて、最適な方法をご提案しています。
特にご高齢の方や、肺機能が低下している方、他のご病気をお持ちの方には、なるべく身体への負担を抑えた「低侵襲手術」を心がけ、手術後の早い回復・呼吸機能の温存を目指しています。
肺の良性疾患(気胸・肺嚢胞・良性腫瘍など)
良性の肺の病気に対しては、胸腔鏡による小さな傷での手術を中心に行っています。
特に気胸は若い方に起こりやすく、「手術をするべきかどうか」「どんな治療が必要か」など不安に感じている方も多いと思います。当院では、まず外来でしっかりお話を伺い、手術が必要な場合はタイミングや方法を丁寧にご説明いたします。また、胸部外傷(転倒や交通事故など)による肺の損傷や肋骨の骨折にも対応しており、整形外科と連携しながら迅速かつ総合的な治療を行っています。当院は24時間体制の救急外来を備えておりますので、急なトラブルにも安心してご相談いただけます。
縦隔腫瘍(胸の真ん中の領域の病気)
「縦隔」とは、左右の肺の間にある、心臓や大血管、気管などがある領域のことです。
ここにできる腫瘍にはさまざまな種類がありますが、もっとも多いのは「胸腺腫」という腫瘍です。
胸腺腫は、悪性の性質をもつこともあり、検査だけでは診断が難しい場合もあるため、手術で「診断」と「治療」を同時に行うことが多くあります。呼吸器外科専門医が、安心・安全な手術を心がけています。
当院の特徴
- 良性疾患にも力を入れています
若い方に多い気胸や,月経随伴性気胸などの女性気胸にも積極的に取り組んでいます。婦人科との連携も行っていますので、安心してご相談ください。 - 充実したリハビリ体制
当院には約150名のリハビリスタッフが在籍しており、術前外来の段階から呼吸リハビリを導入しています。術後は早期の離床・退院を目指し、合併症の軽減に取り組んでいます。 - 退院後のサポートも万全
手術を受けられる方の中には、慢性の肺疾患(COPD、気管支喘息、間質性肺炎など)をお持ちの方も少なくありません。当院では、呼吸器内科と呼吸器外科が連携して、退院後も快適に生活できるよう継続的にサポートしていきます。
ちょっとした咳や息切れでも、「こんなことで病院に行っていいのかな」と思わず、お気軽にご相談ください。
私たち呼吸器の専門チームが、あなたの不安を一緒に受け止め、適切な診断と治療をご提案します。